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弁護士の視点

第1回 金融商品販売法の意義

第2回 金融商品取引法の概要

 
 

 

第1回 金融商品販売法の意義

平成12年5月に成立した金融商品販売法の金融取引における意義について,この場を借りて改めて見直しておきたい。
顧客の立場から見た大きな意義は,業者が顧客に対して行う説明義務の類型化と明示がされたこと,また明示された説明義務に業者が違反し業者が顧客に説明をしなかった場合に,説明を受けなかったことによって損害を被った顧客が業者に対して行う損害賠償請求を容易にする規定が置かれていること,である。

法律の適用対象である「金融商品の販売」の内容は,法2条1項に列挙されている。幾つかを挙げると,
1号 預貯金
3号 信託契約
4号 保険契約
5号 有価証券を取得させる行為(有価証券先物取引,有価証券先渡取引を除く)
等と,殆ど網羅的に規定されているとも思えるが,現在存在する金融商品を個別に列挙している。そのため,今後新たな商品に対して規制をする場合には政令で追加指定する(同項13号)ことを想定している。しかし,規制が後追いにならざるを得ない,という側面もある。

説明義務の内容は,法3条1項に列挙されている。概ね以下のような内容である。
・金融商品の価値の変動要因を直接の原因として(※間接的な原因に過ぎない場合は説明は不要)元本欠損が生ずるおそれがある場合には,その旨及び変動要因の指標等
・金融商品の対象である権利の行使期限,契約解除の期限がある場合には,その旨

業者が顧客に対して,上記の説明を行わなかった場合,説明を行わなかったことによって顧客に生じた損害を賠償する責任を負うことが明記されている(法4条)。
顧客は,従来は,民法上の不法行為責任(民法709条等)を根拠として,業者に対し損害賠償請求をして来たが,損害賠償請求が認められるためには,顧客が以下の事項を立証しなければならない,とされていた。
@ 業者が顧客に対して説明をすべき義務を負っていたこと及び説明義務の内容
A 業者が顧客に対して現実に@の説明をしなかったこと
B Aについて業者に故意ないし過失があること
C 顧客が現実に損害を被ったこと及び損害金額
D 顧客が被った損害と業者が顧客に説明をしなかったこととの間に因果関係があること
D−1 顧客が業者から説明を受けなかったため,顧客が金融取引を行ったこと
D−2 金融取引により損害を被ったこと

このうち,金融商品販売法によって,
@については法律上明記されており,顧客による立証は必要ない
Bについては無過失で良いとされており,立証は必要ない
Cについては元本欠損があれば,元本欠損額を損害金額と推定するため,元本欠損があることだけ立証する
Dについては元本欠損があれば,推定するため立証は必要ない
こととなり,顧客は上記の立証事項のうち,AおよびC(元本欠損が生じたこと)を立証するだけで良いこととなった。

ネット証券等の表示を見る限り,上記の説明義務として明記されている内容は,殆どの業者のホームページに記載されている。これは,業者側にとって,損害賠償を請求される場面で,顧客に説明をしたことの立証手段の一つとしての意味がある。
そのため,顧客としては,これらの記載内容を読むことで,きちんと理解及び納得した上で取引ができるかどうかを吟味する必要がある。また,新しい金融商品については,当該金融商品が金融商品販売法の適用範囲に含まれるものかについて確認することも必要であろう。

(弁護士 吉田 祈代)

第2回 金融商品販売法の意義

今般、証券取引法等の一部を改正する法律(名称を「金融商品取引法」に改正)として、「投資者保護のための横断的法制の整備」が行われた。今回の改正以前、仮称「投資サービス法」として検討されて来た法律の主眼は、

@これまで業法規制として業者毎に行われてきた規制(縦割り規制)から、投資性の強い金融商品・サービスを包括的に対象にすることで、規制の隙間をなくすこと(横断化)

Aこれまでは商品や投資者等を分けることなく一律規制によっていたところ、投資者の知識・経験による区別(プロと一般)や商品類型による区別等を設けた段階的な規制を行うこと(柔軟化)

の二点であった。

上記の主眼に加え、近時の事件に基づき更に検討が加えられた結果、

B公開買付制度及び大量保有報告制度その他の開示制度の規制の強化(開示書類の虚偽記載及び不公正取引の罰則強化等)

C金融商品取引所等における自主規制機能の確保を目的とした制度の整備といった改正が追加された。

(金融庁ホームページより引用)

以下では、@およびAの内容について概観する。
@横断化に関する改正
金融商品取引法における適用対象となる「金融商品取引業」は、従前の証券業に加え、外貨預金、有価証券関連以外のものも含むデリバティブ取引、集団投資スキーム持分等の自己募集を業として行うこと、投資助言・代理業、投資運用及び有価証券等管理業務等を含むものと定義されている(2条8項)。
このように、@の点は、金融商品取引法の中に、金融先物取引法、有価証券にかかる投資顧問業の規制等に関する法律(投資顧問業法)等の一部の法律の内容を取り込んだこと(したがってそれらの法律を廃止する)により実現される。

1.外国証券業者に関する法律
2.有価証券に係る投資顧問業の規制等に関する法律
3.抵当証券業の規制等に関する法律
4.金融先物取引法

他方で、@の点については、以下の合計15の法律において、金融商品取引法において定められている販売・勧誘規制を準用ないし同等の規制を規定することによっても、実現される。

1.商工組合中央金庫法
2.金融機関の信託業務の兼営等に関する法律
3.農業協同組合法
4.水産業協同組合法
5.中小企業等協同組合法
6.協同組合による金融事業に関する法律
7.商品取引所法
8.信用金庫法
9.長期信用銀行法
10.労働金庫法
11.銀行法
12.不動産特定共同事業法
13.保険業法
14.農林中央金庫法
15.信託業法

適合性原則等の業者に対する行為規制については、今般の改正で、書面交付義務や損失補填の禁止、適合性原則といった従前の証券取引法における規制に加え、投資顧問業法を取り込むことによるクーリングオフ規制の適用範囲が拡大される。
また、既に紹介した金融商品販売法における説明義務の適用範囲が拡大されること、その他金融商品販売法について以下のような改正が行われる。

@ 説明対象に「当初元本を上回る損失が生ずるおそれ」を追加。
A 説明事項に「取引の仕組みのうちの重要な部分」を追加。
B 業者による断定的判断の提供の禁止違反に対し、損害額を推定する。

A 柔軟化に関する改正
業者に対する行為規制の一部について、投資家の種類により規制を異にするようになった。
すなわち、「特定投資家」は、いわゆる「プロ」として、「アマ」である一般投資家と、業者の行為規制の適用について区別されることで、大きく二分される。
「特定投資家」とは、具体的には、適格機関投資家、国、日本銀行及び投資者保護基金等の法人とされている(第2条31項)。

さらに、特定投資家のうち、
a) 一般投資家に移行できない特定投資家(適格機関投資家、国、日本銀行)、
b) 選択により一般投資家に移行することができる特定投資家(投資者保護基金その他内閣府令で定める法人)、

および一般投資家のうち
c) 選択により特定投資家に移行できる一般投資家(法人、その知識・経験及び財産の状況等に照らし一定の要件に該当する個人など)、
d)  特定投資家に移行できない一般投資家、

と、それぞれ移行可能性に応じて4つに分類されている。

特定投資家と一般投資家の規制の違いは、特定投資家に対する取引においては@契約締結前の書面交付義務や取引報告書の交付義務等が適用除外とされること、A適合性原則が適用されないこと、が挙げられる。
以上、金融商品取引法における眼目である@横断化およびA柔軟化を図るための改正内容について概観したが、改正される法律は多岐に及ぶ等複雑になっており、まずは自己の扱う商品毎に規制内容を確認する必要があろう。

(弁護士 吉田 祈代)