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公認会計士の視点

第1回 監理ポスト入り

第1回 監理ポスト入り

  蝶理 <8014> が過去に売り上げの過大計上などを行うなどの不適切な会計処理があったと会社側が発表したことを受けて、4月26日付けで東証と大証が同銘柄を監理ポストに割り当てた。これが懸念材料となって27日は前日終値324円から266円まで株価が下落して終わった。

監理ポスト割り当てとは何事かと思い、東証のHPを確認したところ「監理ポスト及び整理ポストに関する規則第7条第1号a(j)に該当のため※上場会社が株券上場廃止基準第2条第1項第11号a前段(「虚偽記載」)に該当すると認められる相当の事由があると当取引所が認める場合」と書いてあった。よくわからなかったので大証のHPも覗いてみたところ、同様に根拠条文が示され、東証には載っていない注記として「注)同社は,本日,平成15年3月期中間決算において,売上の過大計上及び売上原価の過少計上の不適切な会計処理が判明し,半期報告書を訂正する予定である旨の開示を行った。 当所としては,本日の同社の開示内容から,半期報告書の訂正内容が重要と認められる相当の事由があると判断し,今後の推移及び同社が訂正報告書を提出した後の審査の結果いかんによっては株券上場廃止基準に該当することとなるため,そのおそれがある銘柄として監理ポストに割り当て,投資者の注意を喚起するものである。 」と書いてあった。なるほどと思ったものの、ここで引っかかったのは平成18年の4月の今になって、平成15年3月中間期に虚偽記載があったとして半期報告書の訂正をするというのはどのような事態なのだろうということだった。

そこで蝶理のHP上でディスクローズ資料を確認したところ、4月26日付に「平成15年3月期中間決算(平成14年9月中間期)における不適切な会計処理について」というディスクローズがあり、これかと思い読んでみると、内容は平成14年9月中間期に当時特定の営業部で期間利益計上を目的に不適切な会計処理があったこと、それを修正することにより連結単体ともに売上高が約3億円、経常利益および当期純利益が約5億円減少するものと予想しているとのコメントがあった。・・・売上高の修正より利益の修正のほうが多い取引なんてあるのかという疑問が残り、どうも釈然としなかった。それよりも気になったのは、「当該不適切な処理は、平成15年3月末においては全て適切な処理が完了しており、以降の事業年度への影響はありません。」という一文だった。

規則とはいえ、平成18年になって平成14年9月期の不正、しかもすでに適切に処理され今期決算に影響のないのにディスクローズを行った結果、東証、大証で監理銘柄に割り当てられ、さらには株価がストップ安になるというのは果たして正しいのだろうかという思いがした。4月26日の終値324円と4月27日の終値266円の差58円に発行済み株式1億8千万株をかけると100億円以上の時価総額が失われたことになる。企業価値というのは一瞬にして失われていくものだ。

我々公認会計士が、新聞やテレビで報道されている企業の粉飾云々というニュースを見て事態を即解できることは意外に少ない。企業の粉飾や不正を正確に投資家に伝えていくことは非常に難しいものだと思う。それは専門用語を正確に使われていないことや、会計や法律がもともと持っているあいまいな性質によるものが大きいのではないかと思う。また、公的な信憑性の高いディスクローズ情報にあっても公平性、公知性、同時性などさまざまな配慮のあまり、逆に記載内容の制限などがありうまく伝え切れないということもある。投資家は投資情報を利用するに当たり自分の目で情報を選別することに慣れなければならない。それと同時に全ての投資家が不完全な情報のもとで投資判断をしており、その判断に自己の投資も影響を受けるというリスクについても十分捉えなければならない。
 
公認会計士 村上正俊